メキシコへ
私は、いま、「メキシコ」との国境に立っている。
日本を飛び立ったのはほんの少し前だ。
なぜ、私が「メキシコ」にいるのか。
遡ってここに綴ろう。
最近、心が妙にバタバタしている。
あぁ、
旅行鞄を片手に、どこか、陽気な国へでも飛んでいければいいのに!
けれど、実際にはそう簡単に世界旅行なんてできない。
そんな時である。
メキシコ料理店「ラ・ホイヤ」の紹介ページから、こんな言葉を見つけ出したのは。
~パスポート要らずの常夏のメキシコへ旅に出かけませんか?~
怪しい勧誘の文字。
でも、パスポートが要らない、だなんて。(完全ロックオン)
こうして、私は、ラ・ホイヤ(LA JOLLA)を目の前にして立っている。
陽気なメキシコへの憧れを抱いて、広尾のまちへとくり出したのだった。
店内の天井には鮮やかな鳥や、メキシカンハットがぶら下がり
壁には、カラフルで美しいメキシコの工芸品
サインやメッセージが書かれた色紙でびっしり!
観光客気分で、見慣れない料理をオーダーしていく。
まずは、ハラペーニョ・フリトを。
ハラペーニョは、唐辛子の一種だ。
食べて驚くのは、その痺れるような辛さ。
でも、口の中で混ざりあうクリームチーズとともに、
その辛さも不思議と病みつきになってしまう。
これは、緑のポソレ。
透き通る緑色のスープの中には、
シャキシャキ感がたまらない赤カブ、初めて食べる「白いトウモロコシ」など...
お宝がザクザクと埋まっている。
なかでも、あまりの美味しさに小躍りしてしまったのは、
ラ・ホイヤ3月のおすすめだという、菜の花と桜エビの燻風ケサディーヤ。
味は濃い目で、ほんのりスパイシー。
カリカリの桜エビと苦みのある菜の花の組み合わせに、
チーズの香ばしさも加わって、口いっぱいに春のうまみが広がる。
食後は、オルチャッタという飲み物を。
今日は寒かったので、ホットでオーダーした。
日本の甘酒にも似た味。でも、甘酒が苦手な私でも飲める。
「お米の自然な味わいに、シナモンやアーモンドを加えた優しい甘さ」とのこと。
この優しい味を日本語でどう言い表そう。
水色のカップのなかで、雲のようにふわりと漂うオルチャッタ。
ここは、やっぱりメキシコなのかもしれないな。
訪れた者だけが出会える、不思議な味にそう思う。
パスポート要らずのメキシコ旅。
必要なのは、胃袋と、ほんの少しの楽しみ、
ただそれだけ。
れんジョー