日々思うこと
広尾の魅力を語る時、多くの方が「新しいお洒落なお店がたくさんあるのに下町の雰囲気を残しているところが良いですね」とおっしゃってくださいます。以前掲載された日記の中にも、広尾でお店を開いたばかりの方が人情熱い電気屋さんに助けてもらった下町たるエピソードを書いていました。商店街から横道に一歩入ればいまだに残る長屋の面影。長い歴史をもつ銭湯もあります。創業100年を超えるお店もいくつかありますが、やはり下町風情を醸し出しているのは、なんといっても広尾に長く暮らす長老たちの心意気ですね。
つい最近、私は念願の一眼デジタルカメラを手に入れました。オリンパスE-PL3という小型のタイプ。それでもこれまで使っていたコンパクトカメラからすればはるかにずっしりと感じます。久しぶりに手にした宝物。なんだか嬉しくてしょうがない。カシャというシャッター音も実に心地良いです
そのカメラを安価で譲ってくださったのが、広尾商店街の長老のおひとり。カメラは欲しいが何を買って良いのかわからない・・と私がポロっとこぼしたのを聞いて、それなら俺が愛用しているカメラをひとつわけてやるよと差し出してくださいました。アマチュアカメラマンとしては最高の腕前をお持ちの方。HIROOwalk最新号(13号)の「広尾のイチオシ」でもカメラを片手に持ち「いつもお洒落な方」として紹介されています。長年経営されていた花屋を切り盛りしながらも、カメラ雑誌が全盛の頃には、写真コンテストで何度もグランプリを獲っている。現在もさまざまな街に出かけては絶妙のタイミングでシャッターを切り、何気ない風景を一瞬でアートにしてしまう、私にとっては魔術師のような方です。「このカメラで何かわからないことがあったらいつでも聞いてよ」という言葉はどんな説明書より嬉しく、頼りになります。
以前、雑談の中で「広尾の良さってなんでしょうね?」とお聞きした時には「この年になるとやっぱり病院、医院がたくさんあるっていうのは最高だね。でも広尾の良さはなんと言っても人気(じんき)の良さだね。」とおっしゃっていました。辞書によれば人気(じんき)とは「人の生気、活気。また、人々の気配。人が群集してつくりだす気配。人々の気うけ。世間のそれをよしとする感情。」とあります。まだまだ広尾商店街には元気に活躍する長老が沢山います。終戦直後、ほとんど焼野原になってしまった時代から、広尾で生き、商い、広尾を心底愛する。それでいて外から入ってくる新しいものを自然に受け入れる心の廣さ。ここぞという時の気っ風の良さ。このような方達が醸し出す“人気”が、多くの方が感じる「親しみのある下町風情」の源なのではと思うのです。
by Oyaji M