フラへロオヤジのランチ 「ビストロ ラ キュイエール」
「お昼は適当に食べて~」と女房が出かけた。
「あいよ」と私。
広尾散歩通りで美味しいランチのお店に困ることはない。
毎朝のようにロケバスが到着し、ひと月に20誌以上のロケに使われるお洒落なカフェ「CANVAS TOKYO」前の小さな横断歩道を渡り、店前にシンバルを置いてステージ上のシンバルキックが有名な吉川晃司の来店を心待ちにしている「広尾のカレー」、じゃこご飯も最高に美味しく、店主のけだるそうな笑顔が何とも言えない「味福あさの」、美味い洋食を腹いっぱい食べたいときはここの老舗「キッチンふるはし」の前を通り過ぎ、広尾児童遊園の先にある赤い扉の「ラ キュイエール」に行くことにする。
“ この味、このボリュームでこの値段で本当にいいの? ”と店主に尋ねたこともある “ ありがたい普段使いのビストロ ”である。フランス人のお客さんもヒジョーに 多い。外看板のメニューの中に“ アイナメのなんたらかんたら ”を見つけ“ 今日はこれっ “と即決して店内へ。
カウンターには“ 広尾散歩通りでこの人を知らなければもぐり? ”のT君が食後のコーヒーをすすりながら店主と談笑中である。“ どうもですっ ”と私も特等席のカウンターに腰かけた。厨房内を素早く右に左に、手前に奥にと動き回りながら次々料理を仕上げていく店主を見るのが楽しく、いつも” プロってすごい! “と感心する。 冷蔵庫からサッと食材を取り出し、パッと火にかけながら、オーブンにポンとパンを入れ、ドレッシングか何かをガガガガガァ~とすごい勢いでかき混ぜ、切り終えた残りの食材をパクンと真空バックし、ホールのおねえさんに“ それ、取って。あっ、そこじゃない、その下、その下 ”と指示を出しながら、いつのまにか大きなお皿に手ばやに盛り付けている。
メニューをしっかり見ると、 ” アイナメのなんたらかんたら ”とは“ 北海アイナメのポアレ ラタトゥイユ添え ”だった。理解できるのは最初の6文字までだ。釣り好きのT君から「 アイナメだなんてぇ、食べるときは自分で釣ってくる魚じゃないですかぁ~ 」と一言。そういえば横須賀に住んでいたころは小さなアイナメを防波堤で良く釣った。でっかいアイナメを俗に“ ビール瓶 ”と呼んでいたが、今、目の前のまな板で店主が切り分けようとしているアイナメは“ ビール瓶 ”より更に二回りも三回りもでかくて、ぶっとい。つるつるとなめらかで、透き通るようにきれ~な身の色だ。これが“私のポアレ”になるのね。
前菜はこれも大好物のスモークサーモンを選んだ。お皿にピタッと並んだサーモンの上に、玉葱スライスとなんだか緑のハーブかな?葉物野菜かな?が山盛りにたっぷり盛られ、おいしい親子関係となる真っ赤なイクラが散りばめられている。最後の1枚となったスモークサーモンで玉葱スライスたちをくるくる巻いていると、お待ちかねのアイナメの”ポワレ”が運ばれてきた。”ラタトゥイユ”の上にデンと鎮座している。ここの一切れはなんでもデカい。幸せである。“ 良かったら絞ってね ”とレモンのスライスがトンと乗る。ホクホクとなった白身はもちろん、パリパリの皮目がたまらない。” フランス・ニースの野菜煮込み料理(ネット調べ) ”らしい ラタトゥイユもまさに様々な野菜がたっぷりでこれまた旨い。
店主の腕は確かである。それでいてお値段は驚くほどリーゾナブル。思いつくまま発する、脈絡のないオヤジ話にもホールのおねーさんが、なんやかんやと合いの手をいれてくれて嬉しいな💛とオヤジ心も満たされ、いつもながら”広尾のランチ”は楽しいのだ。
by Oyaji・M