聴く散歩#2『111年目の中原淳一展』☆渋谷のラジオ お店に行こう
新年あけましておめでとうございます。
渋谷のラジオ「お店に行こう」新春最初の放送(2024年1月5日)はゲストに株式会社ひまわりやの中原利加子さまをスタジオにお迎えして、現在開催中の『111年目の中原淳一展』について詳しくお話を伺いました。
中原利加子さまは中原淳一のご次男蒼二さまの奥様です。
中原淳一は、昭和初期、少女雑誌『少女の友』の挿絵画家として現在のアイドルのように熱狂的に支持をされ、終戦から1年後の1946年「女性の暮らしを美しくする」というキャッチフレーズで女性誌『それいゆ』を創刊。
続いて『ひまわり』『ジュニアそれいゆ』『女の部屋』などを発刊し、夢を忘れがちな時代、女性たちに暮らしもファッションも心も「美しくあれ」と、幸せに生きる道筋を示してカリスマ的な存在となりました。
活躍の場は雑誌にとどまらず、ファッション、イラストレーション、ヘアメイク、インテリアなど幅広い分野で時代をリードした方。
中原淳一が描く大きな目をした女性像は、現在の少女漫画のルーツと言われています。
「ほんとうの美しさとは、豊かさとは、何なのか」をテーマにしたこの展覧会を昨年12月に拝見し、会場で販売されていた展覧会公式図録『111年目の中原淳一』も読ませていただきましたので、放送で中原さんがお話になった「この展覧会を通して伝えたかったこと」を実感を持ってお聴ききすることが出来ました。
お打合せの時にもおっしゃっていた「現在ある職業、例えば雑誌編集者、ファッションデザイナー、イラストレーター、ヘアメイクアーティスト、インタリアデザイナーなどの基礎を中原淳一が作ったと思っています」という中原さんの言葉が特に印象に残っています。
見えない未来に光を灯すような思いで手掛けた仕事の数々。
雑誌の表紙絵や挿絵などは印刷物では見ていましたが、インクや墨や水彩で描かれた生の原画をしっかりと拝見すると、その美しさ、緻密さ、奥深さを改めて感じます。
日々生きることだけで精一杯だった時代、また紙を十分に調達することすら困難であった時に『それいゆ』を発刊したことには、ただただ驚くばかりです。
創刊号の後期に「今出来る事、今着られる服だけを載せていたら、このそれいゆの存在価値はない」と書いてあります。
「いつまでも古くならないもの、それがむしろもっとも新しいものだといえないでしょうか。人生はスカートの長さではないのです」
中原淳一は心に刺さる、今でも共感できる言葉を多く残しました。
展覧会公式図録『111年目の中原淳一』の中には、手掛けた雑誌、洋服、浴衣、着物、絵画、人形といった作品の図録と共に、中原淳一に影響を受けたクリエーターの方々のエッセイやインタビューが掲載されています。
それぞれの分野で活躍するクリエーターの視点が大変興味深く、いかに中原淳一が時代を超えて多方面にわたり大きな影響、方向性を残したのかが良く分かります。
広尾で19年間営業を続けた唯一の中原淳一ショップ「それいゆ」は2023年12月をもって残念ながら閉店となりましたが、これからも各地で開かれる展覧会やポップアップで元祖「かわいい」を作り上げた中原淳一ワールドを堪能できます。
私の母は間もなく92歳になり当時からの熱狂的な中原淳一ファン。奥様であり元宝塚歌劇団男役トップスターの葦原邦子の追っかけもしていたようです。
展覧会を見て、中原さんのお話を聴かせていただき、いつの日か朝の連続テレビ小説等で中原淳一の生涯が描かれる機会があれば良いのになと感じました。
きっと、当時からのファンだけではなく、中原淳一をご存じなかった多くの方も惹きつけて、大きな驚きと感動を呼び起こすような気がします。
by Oyaji-M