酒飲み話
最近娘から聞かれた。
「お酒を飲んで酔っ払うのって・・・
どんな感じなの?
フワフワする?」
そうだなあ。
まあ、ポーとするね。
それに気が大きくなる。
なんか、できそうもないこともできそうに感じるっていうのかな。
「ふぅーん・・・・・」
この頃はよく記憶が飛んじゃう。
ほとんど覚えてないんだよね。
2件目なんて、行ったことすら覚えていないけど。
行ったらしい。
「・・・・・」
昔のことだけどね。
学生時代飲みに行くとね。
いつもこれをやると “ あっ、オレ酔っ払ってるな ” ってわかるってことがあったんだよ。
「・・・・」
あのね、トイレに行ったときにね、
メガネかけたまま顔洗うの。
「えっ・・・・・」
いくら顔を拭いても目の前のしずくが残るってわけ。
メガネは拭いてないから。
ハハハ・・・。
「・・・・」
学生の時ってさ、早い時間から飲めるじゃん。
六本木のシェーキーズでさ。
良く行ってたんだよね。
同じクラスのやつとふたりで。
ひとりずつ、ビール、ピッチャーで飲んじゃうの。
まるまんまね。
あのデカいやつ。
ジョッキに入れると5,6杯ぐらいとれるやつ。
両手で持ってそのままグーっていくわけ。
そんで、あそこのポテトさ。
ジャガイモを1センチくらいかな。
このくらい,
厚めに切って揚げてあるからうまいのよ。
食ったぁって感じがして。
スパイス効いてて。
これにビールが最高なの。
で、当時は生バンドが入ってたんだよね。
バンドっていっても二人で、バンジョーっていったかな。
あの、ほら、引くところが丸いギターみたいなやつ。
あれで演奏して歌ってくれるわけ。
早い時間なんて俺たち以外ほとんどお客さんいないから
サイモンとガーファンクルとかリクエストして歌ってもらってたんだよね。
俺たちだけじゃん。
思いっきり拍手してさ。
チョーシこいて、ピッチャーおかわりなんてね。
金があればだけどね。
学生だから。
いやーあの頃は飲めた、飲めた。
「・・」
夕方から飲み始めて、結構飲んでも夜7時ごろだったりするわけ。
そんな時間に帰ってくるんよ。
ちょうど会社員が帰るラッシュっぽい時間でさ。
混んだ地下鉄でさ、酒臭いの俺たちだけなのよ。
その時間じゃ、まだ会社員とか飲んでないからさぁ、
まわりのみんなの視線が語ってんの。
だれだよ、こんな時間から酒くせ~のって。
俺たちもなんだかその視線わかっちゃうわけ。
だから、わざとらしくシラっとした顔して,
だれでしょうね?みたいな顔してみるんだけどバレバレなんだよね。
ハハハ・・・。
「・」
聞きたくなかった話のようだ。
最近、商店街のお店で飲んでいない。
お店閉まってるし。
夜の街には人がいない。
緊急事態宣言が出てるんだから当然だ。
さびしい・・・。
別に酔っ払いたいわけではない。
「あ~、どうも」
「いらっしゃい。あら、今日は早いじゃないですか。おひとり~? カウンターにどうぞ」
「家族がね、旅行に行っててさ、一泊だけなんだけど。
まあ、夜ご飯どうしようっかなって困っちゃってさ~」
「困っているようには見えないですよ~。なんかうれしそうで」
「こまったぁ、こまったぁ・・・・っと。 今日はちょっと飲んじゃおうかなぁ」
「今日は、ですか? まあ、今日もゆっくりしていってくださいね」
「大将、今日は魚は何がいいんすかねぇ?」
「いくつもありますよ。イサキもいいし、アジもよくなってきましたね。 太刀魚焼きましょうか?」
「いいっすねぇ。お願いしまっすぅ。 日本酒のメニューくださ~い」
「はいはい」
一日も早く、こんな“日常”が戻ってきてほしい。
by Oyaji-M
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